コーティゾンを打ちました
アポイントメントは10時半だったです。
道路が事故などで混むといけんので早めに出て受け付けに立ったのは20分前だったです。
“そこらに座っておまちください”
・・・どーせ前回のように壱時間ばかし待たされるじゃろ・・今日なんかそれに20分加算されるじゃろ・・ふふふ(^^) オレはバカじゃないからな、まえのように病院でボンヤリと時間をやり過ごすような愚かな失敗はしないのだよ・・・
と、市彦は低くうそぶきながらMBをおもむろに開け、パソコンを取り出しながら周囲を見回し、もしも電池がきれたらあそこで充電しようと決める、そして、そういう気の効く自分はまだまだ認知症にはほど遠いのだと想い、オレはなんと鋭いのだろうかと満足していた。
これから呼び出しがあるまでたっぷりと小説でも書けるであろう・・きっと書くのに没頭しているころに美人の看護婦ちゃんが目の前に立って、ミスターナガタ♪ 私についてきてくださいな(^-^)とほほえみかけながらオレを個室へと導いてくれるのだ。
ふふふ、前回はそうだったからな、またあのような白人の美人が出てくるのだよ。まあまかせておけ、オレはこの病院については熟知しているのだ。だからこれから起こることの一部始終を事細かに把握してるってわけ、大船にのったつもりでここで待つのだ・・・。
こうして市彦は待合室に座る。患者は20名以上はいたので5分おきに呼ばれるとして100分はたっぷりある。薄笑いをうかべながらパソコを開き病院のワイファイにつないだ。さて、まずはニュースでも読むか、小説はそれからだ、なんなら30歩あるけばスタバがあるから珈琲など飲みながら書くのもオツなもんだ。
そう考えた刹那、
“ミスターナガタ? ご案内いたします”
顔を上げると白衣の男が立っていた。
“What? already?・・are you kidding me?”
えっ? もうだってぇ? 冗談かい?
そう言いながらもソソクサとパソコを閉じてMBに収める。“こんなに早く始まるなんて想わなかったよ” と言いながら20人ほどの患者を見回す。まあ、考えてみれば皆が同じセクションを待っているわけではないからな、と納得しながらガッシリとした体格の看護師について行き示された場所にMBを置き、言われるままにベッドに横たわる。
“私の名はマイクです、質問があったらなんでも聞いてください・・・”
“いまからやるインジェクションというのはCortison shotというやつ?”
“はい、まあ、そういったものですね・・・”
“五月までには治らないとトラブルなんだけど、どう想います?”
“どうして五月なんです?”
鉄砲を撃つことをやたらとは言いたくない。中には銃反対派がいるので腰に毒針でも刺されたらいかんじゃないのよ ^_^; しかし隠すのもなんだ。ゴルフやると言って相手が詳しくて聴かれたらすぐにボロが出る。ま、相手はドクターみたいなもんだから信用しよう。
“ピストルのワールドコンペティションに出るので治らないとまずいのですよ”
ここで相手の目をじっと見る。どういう反応かが楽しみなのだ。
“おお〜!・・・” と彼は一瞬上を向いた、数秒の間があって、
“ちょうど私もリローダーを買ったんです!!”
と、嬉しそうに言うではありませんかっ!!
“どこの? ディロン?・・・”
“いえいえ、安いシングルステイジです・・私はライフルの精密射撃に凝り始めたところで308と223を撃っているんですよ”
“どれくらいの距離で撃ってるの?”
“今は500ヤードでやっています”
“射場はどこを使うの”
“クーリンガです”
“おお、あそこなら1マイルを撃てるよね”
“行ったことありますか?”
“数回行ったよ、あそこはたまにSEALティームが狙撃訓練に行くからね”
・・・と、話は盛り上がり、マイコ看護師はXレイの透視器具を見ながら準備を整え、話題はずっとライフルとタマのことばかり(^○^)
歯医者といい、ファミリードクターといい、レントゲン係といい、どうしてこうも鉄砲好きが多いのか?・・ほんとアメリカは凄いですよ。
そこに小柄で細い女性が現れた。
“ハーイ(^-^)/ 私はドクター ウニャウニャよ、インジェクションを始めましょうね”
ウニャウニャの部分は聞き取れなかった^_^;
こっちは上を向いて寝ころんでいるので名前を聞き返す気がせず、ハローとだけ言う。彼女は多分インド人ではないだろうか。ここらにはインド人の医師は多く、優秀な人が多いと聞いていた。なるほど目つきと笑顔に知性を感じる。
“なにか質問あります?”
“インジェクション、痛いですかね?”
“あ〜・・そうでもないわよ”
“エニウエイ貴女がボスだ、お好きに・・・”
“まず麻酔の注射しますね”
チクリとした、だが一瞬だけで痛みは続かない。女医さんは麻酔を打った左の腹をすこし揉んでいる。
“ワッシは尻から打つと想ったのに腹からやるのですね?”
“そうよ、こっちからのほうがジョイントに近いのよ”
そこにマイクが割って入る。
“ドクター、この人はピストルの世界大会に出るんだそうですよ、五月にだって・・・”
“まあ(^○^)いいわね〜♪ 充分治るわよ〜”
そこからまたGun談義がつづいた。
“ワッシは338ラプアが好きでね〜”
“おお〜!! 私の父もそれ持ってて、でもタマが高いのでゼロを出すのに100ドルもかかったとヒーヒー言ってましたよ〜(^◇^;)”
“308より223の方が当たるのかな?”
“ロングレンジでは223の方が当たりますね”
“うん、たしかにそういうとこあるよね〜”
初めは、マイクが患者の気持ちを落ち着かせるために鉄砲の話に調子を合わせようとするのかと想った、が、彼の興奮したような弾んだ話し方と知識はけして低くはない。
と、そんな印象を持ったところで、
“はーい、終わりましたわ”
と、女医さん。
“ええ!! なにも感じなかったけど??”
“ええ 麻酔が効いていますからね・・・はい、では立って歩いてください”
ゆっくりと立ち上がった。・・・痛みが消えていた。まったく痛くない!! うそのように!!
“でも麻酔が効いているだけで、今夜あたりから痛みます。明日は目まいや頭痛などの副作用が出る人もいます。症状が重いと感じたらドクターに連絡してください。打った薬が効き始めるのは明後日からなので、二日間だけ静養してください。そして痛みが消えたら軽い運動を始めてください。この薬は8ヶ月間は効きます。痛みが再発したら、また打ちますから戻ってきてください・・・”
といった助言はマイクがしてくれた。そして、
“じつは、私CCWのテストを受けて合格したばかりなのですよ、ですから今後は拳銃の訓練をする必要があると考えていたところなのです・・・これについて何かアドヴァイスをもらえたら助かるのですが・・・”
“オウケイ、2週間ほどしたらワシも練習を始めるので、互いのタイミングが合えば一緒にやりましょうよ・・・”
そういって携帯の番号を渡しました。
またも出逢いがあったというわけですよ♪
Xマイクという放射線の名手に出逢った市彦は、かねてから考えていたエックス殺人光線の銃と宇宙から撃てるX大砲、地表を焼き切りながら飛翔するX線ミサイルなどを共同開発して自衛隊と米軍に納入するのである。
腰の痛みが元となってチャイナの日本征服を阻止できることになる、、いや〜歴史の大転換なんて、こうしたササイな出来事から始まるものなんですね〜(^O^)/
by 誇小妄想の拳銃野老